Language Reality>Verb Reality

Verb Reality in Movie Scenes

動詞の臨場感

--- 映画で観る場面の動詞 ---

動詞には 必ず場面が付いている。

動作や振る舞い 様子や状態を表現するのが 動詞の役割。動詞には それが表現する特有の場面がある。

しかし 日常的に見聞きする動詞は 多様な場面で使われている。どんな状況で使われているか その現場体験を積み重ねて 語感をつかみ取りたい。

ここでは call, have, get, take, make を取り上げた。


  1. 呼ぶという意味を持つ call。日本語でも「モーニング コール」のように定着している。
    video 1貴族の屋敷で待遇がいいはずなのに 買い取られたラッシーは毛並みも悪くなり 元気がない。主人に呼ばれた犬の世話係が返事をしての一言。

    Yes sir. You called [me], sir?
    ヒトが人を呼ぶ call。ここでは用があって人を呼んでいる場面。
    video 2デートにお出かけの二人だが 一方は妻をなくした貴族 他方はアメリカからの旅行者の付添い人。どうしても敬称 Mr. をつけて呼んでしまう。そんな堅苦しい呼び方はよして欲しいと一言。

    My family call [me + Maxim].
    My family は[ me + Maxim ]と呼ぶと言うことなので「わたしをマクシムと呼ぶ」となる。
    video 3有名な映画俳優が乗った車が街中でパンクしてしまう。それを見つけたファンが押しかけて大騒ぎ。何とか脱出しようと相棒に助けを求めて一言。

    Call [me + a cab]!
    人だかりから逃れるために「俺タクシー呼んでくれ」と言ったのに 相棒は「俺タクシー呼んでくれ」とわざと間違えて Okay, you're a cab. と声に出して呼んでやったと言う駄洒落の場面。

      Call [me に + a cab]! ・・・タクシーに電話してくれ
        ↓ わざと 誤解して からかった
      Call [me を + a cab]! ・・・愛称で 呼んでくれ
    検索語のヒント>call me
    call me ~ の表現で思い浮かぶ状況をチェックしてみよう。あらかじめチェックしておくと いざと言う時にピンと来るかもしれない。

    日本語には便利なテニヲハがあるが 英語にはない。動詞の後に 言葉が並ぶだけである。だから
      Call [me + a cab]! を
      Call [me を + a cab]! と理解するか
      Call [me に + a cab]! と聞き取るか
    の手がかりは 言語表現の中にはない。決め手は 場面の空気と言うことになる。日常を共有しているからこそ テニヲハのない単語の羅列で不自由なく生活が送れるわけだ。英語を不自由なく使いこなすには 何よりもそうした日常経験と言う体験の積み重ねが大切になる。映画のシーンはそうした体験を仮想現実として提供してくれる。
    call と言う比較的分かりやすい動詞であっても 後ろに続く単語列をどう解釈するかは場面に依存する。まして have, get, take, make のような原初的で基本的な動詞の場合には なおさら 状況をよくつかんでの理解が必要となる。
  2. 「手に入れる」と言う意味の get は 日本語でも「お宝をゲットした」などと おなじみだ。
    video 1南北戦争が敗戦となったジョージアを逃れ 実家の大農場に戻る。そこにやって来た北軍兵をスカーレットが射殺した直後の場面。このままでは ばれて・・・と不安になって一言。

    they'd ... get [you].
    ヒトが人を get すると言うこと。場面は 北軍が殺人犯を get するので「逮捕、連行」となる。
    video 2竜巻で飛ばされてから冒険の旅を続け ようやくたどり着いたエメラルドシティー。ここの魔法使いに頼むとお家に帰る方法を教えてくれるはずだったのに 門前払いを喰わされた場面。ブリキ男がドロシーを慰める一言。

    We 're going to get [you + to the Wizard].
    ヒトが人を get すると言う get だが 人の後ろに to the Wizard (魔法使いのところへ)と言う説明がついている。場面は 俺たちが君を魔法使いのところへ get するので「連れて行く、送り届ける」となる。
    video 3亡命資金が底を付き パスポートを買うには身売りするしかないと言う若夫婦に博打で勝たせてやった場面。そんなリックを称えて一言。

    may I get [you + a cup of coffee].
    ヒトが人を get すると言う get だが 人の後ろに a cup of coffee (コーヒー一杯)と言う説明がついている。場面は みんなが[ いいことをした人+コーヒー ]を get するわけなので「人+コーヒー」の状態を手に入れる=「人にコーヒーを手に入れてやる、ご馳走する」となる。
    検索語のヒント>get (you|me) a

    誰が 何を get するかによって get の具体的な様態が決まってくる。それを決めるのは場面の中での具体的な状況である。
      they'd ... get [you]
      we're going to get [you + to the Wizard]
      may I get [you + a cup of coffee] ?
    英文の基本構造は次のスタイルに決まっている。

      主語動詞+[対象となる人や物事や姿質]

    このとき大切なのは 動詞+[・・・] と言う 動詞のカーバーする範囲。ここに何が どんな順番で入っているかに敏感になることが 英語理解の入り口となる。日本語だとテニヲハがあるので「君にコーヒーをおごろう」でも「コーヒーを君におごろう」でもいい。しかし英語はテニヲハを使わないで「わたし あげる 君 コーヒー」と語順で意味を作りだす。
  3. take は「つかむ」とか「手に取る」と言う意味の基本語。「テイクアウト」などと日本語でも使われている。
    video 1宝島を目指す航海の途中に 腹の探り合いをする二人。でも実は心を寄せ合っている。王宮から連れ出されたときのことをめぐって シンドバッドの本心を試そうと一言、

    ... when you took [me]
    ヒトが人を「手に取る」ので 連れ出すと言うような状況である。ここでは頭陀袋に詰め込んで誘拐したことを指している。
    video 2フランスに囚われているはずの国王が隠密裏に帰国した。それを察知した王子は刺客を差し向ける。ロビンに危険を知らせる途中で倒されてしまったマッチが横たわっている場面。助け起こしてくれたウィルにマッチが一言。

    Take [me + to Robin]
    ~を手に取ると言う意味の take だが うしろに me to Robinが続いている。助け起こされたマッチがウィルに[ 俺+ロビンのところに ]の状態を手に取れという場面なので「俺を ロビンのところに 連れて行け」となる。
    video 3電話の相手は 会うたびに名前が変わる不審な男だが 憎めないやつ。今度はどんな名前を名乗るのかと思いながらの 嫌味な一言。

    Take [me + a while] ...
    ~を手に取ると言う意味の take だが me a while と続く。[ わたし+しばらく時間 ]の状態を手に取れとことなので「わたしに~の時間を頂戴」となる。
    検索語のヒント>take me

    言葉の意味は 常に具体的なもの。だから 誰が何をどんな状況で take するのかによって take の実態は変化する。

    そこで試しに take の意味を辞書から拾ってみたところ さまざまな日本語が並んだ。

    取る,取得する,手に入れる,かかる,引き算する,引用する,飲む,稼ぐ,獲得する,感じる,吸い込む,契約する,研究する,効果をもたらす,採用する,使用する,持って行く,借用する,取り入れる,受ける,襲われる,書き留める,乗る,食べる,心を奪う,摂取する,占領する,耐える,奪い取る,買う,費やす,捕らえる,捕縛する,捕虜にする,抱く,黙って取っていく,輸送する,用いる,利用する,連れて行く,,,
  4. 「作る」と言う意味の make は 日本語でも「メイク ドラマ」などと おなじみだ。
    video 1オペラ座に怪人が現れた。鼻が高くて赤ひげの・・・と語っている場面。そんな気味悪い話は聞きたくないと一言。

    you make [me + nervous]
    ヒトが~を make すると言う文だが make の後ろに 人(me)と nervous (怖がる)とがついている。場面は 奇怪な話をする語り手が[ 人+怖がる ]の状態を作り出すと言うことなので「人を怖がらせる」となる。
    video 2昨晩は酔っ払ったようになって街中で眠ってしまったアンが その理由を話している場面。飲まされたものが・・・と言う一言。

    they ... to make [me + sleep]
    ヒトが~を作り出すと言う make だが make の後ろに me と sleep とがついている。場面としては 学校の先生たちが[ わたし+眠る ]の状態を作り出したので「眠らされた」となる。
    video 3破産寸前の農場を再建するため 金繰りを始めなければならなくなったスカーレット。かと言ってまともな着物一枚残されていない。ふと思い立って カーテン生地に手を伸ばしながらの一言。

    you make [me + a new dress]
    ヒトが~を make すると言う文だが make の後ろに me と a new dress とがついている。場面としては 乳母に[ わたし+ドレス ]の状態を作ってくれと言う流れなので「わたしに 服を仕立ててくれ」となる。
    検索語のヒント>make (me|you) a

    昔 下手な中国人の真似で「アナタ ワタシ フク ツクル」のような口調がはやっていたことがある。You make me a new dress. はこれに似てテニヲハがないので 慣れるしかない。基本はあくまで
      you make [me + nervous]
      they ... to make [me + sleep]
      you make [me + a new dress]
    であるから 単語の指す場面の意味に注意することが大切。
  5. 物や状態を持っていると言う意味の have は be や do に続いて利用頻度の高い動詞だ。たとえば drink できるものや状態は限られるが have できるものには ほとんどが限りない。
    video 1連続殺人事件の鍵を握るものがここにあるようだとの情報を得て 仕事を放り出して 無理やり公園に連れて来られ 手がかりを探している場面。にもかかわらず うろうろするだけなので 苦情の一言。

    ... I had [a job]
    a job を手に持つことはできないが 社会関係の中で自分の経歴として「持つ」ことができる。
    検索語のヒント>have a
    video 2館で仮装舞踏会を開くことになり衣装をどうしようかと考えている女主人に 女執事が肖像画に描かれた華やかなドレスを薦める場面。

    you could have [it + copied]
    物や状態を持っている have だが ここでは[ it copied ]を持つと言う。it はドレス。「ドレス+複製された」状態を持つと言うことなので「ドレスを複製させる」との意味になる。
    検索語のヒント>have (it|them) ~ed
    video 33人目の夫との間に初めての子供が生まれたと言うのに まだ初恋の人を忘れられないスカーレット。そこに夜食をいっしょにた食べようと夫がやってきた場面。

    I 'll have [them + bring my supper]
    物や状態を持っている様子を表す have。ここでは[ them bring my supper ]を持つ。them は召使たちなので「召使+夜食を運ぶ」と言う状態を持つことになる。つまり「召使に夜食を運ばせる」となる。
    検索語のヒント>have my ~1 go
    ここで取り上げた文型「 have + 人 + do =人に do させる」を効率よく検索することはむずかしい。それは do のところに入るさまざまな動詞を一括して指定するような検索機能がないことによる。そこで お目当ての動詞か ありそうな動詞を入れて試してみることになる。
    my と 動詞 go の間に ~1 を入れているのは my + 名詞1つ + go を期待してのことである。にょろんマーク ~ TILDE チルダ は 「ここにいくつかの単語が入る」と言う意味だが はいる単語の数を指定できる。~1 は1単語と言うこと。1~3単語にしたければ ~1,3 となる。この方法を使うことで my と go の間にたくさん単語が入ってしまい 目的の文型「 have + 物 + do 」から外れてしまうことを防ごうとしている。

    have を最初に習ったとき「手に持つ」と覚えたので しばらくは I have a dog. と言うと 犬を抱っこしている様子ばかり浮かんできていた。その後 実は必ずしも手に持っていなくてもよいと知り have の語感が広がったのを覚えている。たとえば 犬を飼っているときの表現が she has a dog =[ she has a dog ]。

    助動詞の have が出てきて 完了形だとか教わり始めたときには それまでの have とはまったく別人のように考えてしまっていた。

    しかし 今では 動詞と言われようが 助動詞と言われようが 同じ have として受け止められるようになってきた。たとえば she has gone は [ she has gone ]で「gone した状態を she が have している=彼女が消えた」。

    言葉を使うには 詳細な分類学だけでなく 統合的な視点も もっと大切にした方がよいように思う。